最近、書店の本棚に終活関連の書籍が増えてきたように感じます。専門家のみならず、世間でも関心が高まっているのでしょう。
時々、何のために遺言を書くのかとご質問を受けることもあります。
端的に説明すると「財産を引き継がせたいとその内容を、ご自身で決める」ための方法のうち代表的なもの、それが遺言です。
遺言がなくても、相続が発生したら、法律の規定にしたがって財産は引き継がれます(法定相続)。ただ、ご自身の思ったとおりに引き継がれるとは限りません。
例えば、婚姻届を提出していないパートナーに財産を残してあげたいと思ったとしても、法律はそのパートナーよりも親族を優先する仕組みになっているため、遺言を書かずに旅立ってしまうと、ご自身の思いが実現されないこととなってしまいます。
もちろんこれはほんの一例です。

また、いざ遺言を書こうとしても、きちんとした方式で書かなければ、ただ思いを綴ったメモになってしまいます。
遺言はその種類に応じて、さまざまな要件がございます。
ただ、遺言のはじまりにあるのは法律ではなく、それをしたためるご自身の思いです。
その思いだけをお持ちいただけたら、法律の複雑なことは私がお手伝いします。
これから遺言を書いてみようとお考えの方、一旦書いた遺言を修正したいとお考えの方、一度お話ししてみませんか。

遺言の種類とメリット・デメリット

時々ニュースで「遺言が無効との判決が出た」「遺言書が複数発見されて裁判で争っている」といった話を耳にすることがあります。
これは事案によって何について争っているのかという点について、判決文等をしっかり読まないと分かりません。
しかしながら、いったん法律上の手続を履践し適式な遺言書を完成させたにもかかわらず、後になってその効力が遺族の間で争われるといった話は、実際にあります。

ここでまず、なるべく簡単にご理解頂けるよう、各種遺言とそのメリット・デメリットを表にまとめました。
どの遺言を書くべきか、とお考えの方のご参考になればと思います。

遺言の種類(関与機関)メリットデメリット
自筆証書遺言・安価
・遺言の存在と内容を誰にも知られない
・遺言者ひとりで完結できる(証人不要)
・遺言の存在を気付かれない
・方式の違反による無効が争われる可能性(特に加除訂正)
・偽造や隠匿、紛失の危険
・検認手続が必要(手間と費用)
・視覚にハンディキャップのある方にとって作成しづらい
自筆証書遺言保管制度(法務局)・検認手続が不要
・偽造や隠匿、紛失の危険がない
・費用がかかる
・法務局では方式のみ審査される(内容は審査されない)
・遺言者本人の法務局への出頭が必須
秘密証書遺言(公証人)・ワープロや代筆による作成可
・仮に無効であった場合でも、別方式の遺言として有効となる可能性
・遺言の存在のみを明らかにできる(偽造や発見されないリスクが小さい)
・遺言の内容を秘密にしておくことができる
・点字による作成可
・費用がかかる
・証人が必要
・作成に他者が介入した場合、内容が漏れる危険
・方式の違反による無効が争われる可能性(特に加除訂正)
・検認手続が必要(手間と費用)
公正証書遺言(公証人)・方式の違反による無効が争われる可能性が極めて小さい
・偽造や隠匿の危険が極めて小さい
・検認手続が不要
・費用がかかる
・証人が必要
・遺言の存在と内容を秘密にしておくことができない

代表的な特徴の比較は以上です。実際に書き始めると、形式、内容ともに注意深く作成しなければならないため、なかなか骨が折れる作業であることは確かです。
リスクを承知でとにかく安価に作成したいといった方でしたら自筆証書遺言を、確実に執行されないと困るという方でしたら、公正証書遺言をおすすめします。
当事務所は全種類の遺言作成につき、ご依頼を受ける態勢を整えております。少しでもご不安な方、どうぞお気軽にご相談ください。